サイレントフィルム taniguchip

続・映画制作へのいざない

前にも少し言いましたが、映画のいいところは、後世に残せることだと思います。
もちろん、絵画や小説でも、後世に残る物がありますが、他のものに比べて、残しやすいのは、映画ではないかと思います。
絵画や、彫刻・建築などは、実際に見てみないと、そのよさが分からない場合があります。 書籍は、最近、電子書籍が増えてきているので、後世に残すことができます。 しかし、古典は、現代教育のレベルを超えていて、難解なものとなっています。
映画の場合、デジタル化の技術のおかげで、データ化すれば、どこでも見ることが できます。そして、映画は、さまざまな人たちや物が関わっているので、関連づけが多く、検索がしやすいです。
例えば、溝口健二の「山椒大夫」。白黒の日本の古い物語だと思う人もいますが、 当時の日本の撮影、セット、俳優の演技は、とても技術的に高度で、 今の日本映画では、実現が不可能なものです。 世界中に、そういった過去の素晴らしい技術がつまった映画が数多く残っていますし、何らかの形で見ることができます。
自分の経験で言うと、10年前に作ったCMは、YOUTUBEで、やっとみれるかどうかという程度の保存しかされていませんが、 映画は、Amazon等で販売されていますし、配信されれば、永久に、見てもらうことができる可能性もあります。
自分が情熱をかけた証(あかし)が、ずっと何らかの形で、人の目に触れ続けることができることは、とても嬉しいことです。 映画を作る時には、そういうものを作ろうという気持ちになれるのではないかと思います。

私が、情熱をかけて、携わったコマーシャルは、もっと後世に生かせる方法で、保存・公開ができないかと思っています。

映画を作りたい人たちへ。

CMのプロデュースを中心に様々なタイプの映像をプロデュースしてきました。
映画は、2003年〜2013年の間で、制作費が500万円から3億円までで、7本の作品をプロデュースしました。(HPのプロフィール参照。) 映画は、ハイリスクローリターンなので、自分の会社を設立してから、やらないと決めていたのですが、 映像に携わる人たちで意外に多くの人が映画を作りたいと思っていることに気づきました。 であれば、誰でも、一生に一度は映画を作ってみたい人に映画を作って公開するようにお手伝いできないかと思いました。
映画作りは、楽しいと思います。しかし、現実を把握しないで、思い込みだけで映画を作ってしまってトラウマになってしまった人が沢山います。 実は私もその1人でした。しかし、もともと映画が好きでこの業界に入ったので、何本か作るうちに学習して、今は、映画作りのノウハウがあります。
皆さんの中で、映画に対して強い思いがあるのなら、技術の発達によって、安価に映画ができるようになったので、現実を理解しながら、 後悔しないようにチャレンジするべきだと思います。
映画「華麗なる激情」の中で、時のローマ王が、ミケランジェロに、「どんなに国を征服しても、永遠に残る芸術に比べては、意味のないことである。」 というようなことを言うシーンがあります。自分が生きてきた証として、映画を作って残すということも、一つの方法だと思います。

最初に)
まず、どういう映画を作りたいかを決めて、計画をたてます。

重要な要素
1. 企画(原作物、オリジナル、ドキュメンタリー等)
2. スタッフ(監督・脚本・プロデューサー)
3. 制作費

映画作りのプロセス)
1. 企画
2. 資金繰り
3. 脚本作り
4. 準備
5. 撮影
6. 仕上げ作業
7. 宣伝
8. 公開
9. 二次利用(DVD等の発売)

ケーススタディ)
以下、私がプロデュースした映画について、説明します。
自分が作りたい映画に当てはめてみてください。
もし、あてはまるものがなければ、一緒に考えましょう。
計画をたてる時が一番楽しいかもしれません。

ケース(1)オリジナル・普通の予算・全国公開(SURVIVE STYLE5+)
ケース(2)オリジナル・超低予算・全国公開(星影のワルツ)
ケース(3)オリジナル・低予算・全国公開(行け!男子高校演劇部)
ケース(4)ドキュメンタリー・超低予算・一館特別上映(THE MOMENT 写真家の欲望)

ケース(1) SURVIVE STYLE5+
はじめてプロデュースした映画です。制作費3億。全国公開の東宝配給の映画です。 CMの仕事を一緒にしていたタグボートの多田さんから映画を作りたいと話を聞いて、 自分も前から映画を作りたかったので、喜んで引き受けました。
十分に準備したつもりでしたが、ひたすら辛かった思い出が多いです。
今でもDVDを見る事ができません。このあと、1年後に、フジテレビの“X’smap”という年末のスペシャルドラマをプロデュースすることになり、 リベンジするつもりでしたが、さらに辛かったのを覚えています。しかし、多くのものを学ぶことができました。
オリジナルの実写映画で、ヒットするのは、今の日本では、確率的に非常に小さいです。

ケース(2) 星影のワルツ
仕事で知り合った写真家の若木信吾さんが、自身の写真集の中でたびたび登場する、おじいさんの映画を、故郷である浜松で作りたいという話がありました。
最初、プロの俳優を使いたいという話もありましたが、主人公の喜味こいしさん以外は、若木さんの友達や、現地でオーディションした人を使って、ほとんど素人の出演者で撮影しました。 スタッフは、若木さんを入れて7人(監督・撮影、撮影助手、録音、助監督、制作×2)で、若木さんの実家の近くの空家で合宿して、一ヶ月撮影しました。 つらいと思っていた合宿生活を、みんなが楽しんでいる姿を見て、ショックを受けました。映画作りが楽しいと思った最初の映画です。 映画は、ロッテルダム映画祭等、海外のいくつかの映画祭で上映されました。

ケース(3) 行け!男子高校演劇部
低予算のコメディ映画です。池田鉄洋さんの脚本が素晴らしかったので、凄く予算がなかったのですが、腕によりをかけて(?)やりました。 埼玉県の廃校で、約3週間撮影しました。ケース(2)でもやりましたが、家を3軒借りて、30人近いスタッフが合宿しました。楽しい思い出が多い映画でした。

ケース(4) THE MOMENT〜写真家の欲望〜
写真家の宮本敬文さんが、キャノンのデジタル一眼カメラで動画を撮ることに熱中していて、であれば、一緒に長いものを作ろうという話をしました。 宮本さんは、彼が尊敬する写真家の操上和美さんのドキュメンタリーの企画を考えました。 宮本さんが知り合いのCS放送局のプロデューサーに相談して、放送をする前提で制作費の一部を出してもらいました。 そして、番組用に約1時間のものを完成して放送後、映画用に撮り足しをして、映画として完成させ、東京都写真美術館で、7日間、レイトショーで上映しました。 宣伝は、美大の学生にTwitterとFacebookと公式HPを作ってもらい、 後は、ポスターとチケットの印刷だけです。制作と同じ位、手間のかかる宣伝と配給をSNSを使って、最小規模でやりました。 それでも、初日と最終日に、操上さんと宮本さんの対談を行った効果があり、満席になったりしたので、 宣伝費と会場費を回収することができました。制作プロセスの 1 〜 8 までをほとんど宮本さんと私二人で行いました。

結論めいたもの)
予算がなくても、そのことを理解しつつ、工夫をすることによって、無理をせずに楽しく映画を作る事ができます。 (2)〜(4)の映画は、スタッフのほとんどが楽しく映画を作れたと思っています。
極論言えば、1000万あれば、制作〜公開までできます。(それ以下でできる人もいると思います。一応の目安です。) おそらく、1000万の映画は、儲からないとほぼ断言できます。 しかし、制作費が高くなり、出資者が増えると、どんどんいろいろな事情や、口出しする人が増え、自由に映画が作れなくなります 。楽しくないですね。そして、最初に申し上げたように、映画は、利益を上げる事が難しいビジネスです。 であれば、回収することを目的にしないで、後世に残す自分の創作物として、映画を作ることは、ありだと思います。 (3)、(4)は、そういった主旨の映画です。映画を通じて、若木さんも宮本さんも、大きな財産を残す事ができたと思います。
私の映画に対する考え方に反対する人も大勢いると思いますが、長所と短所を理解して、 無理をせずに、楽しく映画を作って、自分の作品として残すのは十分にありだと思います。

宜しくお願いします。

サイレントフィルム 谷口宏幸

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