サイレントフィルム taniguchip

安室奈美恵さんについて

2012年のドームツアーの映像から引退まで、CM、コンサート映像など、様々な映像を
プロデュースしました。安室さんはできることとできないことがはっきりしているので、
クリエーターにとって、自分の得意技で一方的に攻めることができない手強い相手です。
安室さんのことをまず理解しなければなりません。ある意味、鏡のような存在でした。
クリエーターを選ぶのにはとても悩みました。印象深かった仕事は以下の通りです。

2012 5大ドームツアーのオープニング映像

珍しくストーリー仕立てになっています。OPの中では一番気に入っています。

LIVE STYLE 2014の映像

喜田夏記さんに全映像のディレクションをお願いしました。
山村一智さんのセットと相まって、喜田さんらしい統一感のある世界観を作ることができました。
一部のファンやスタッフは、あまりクリエーターの世界観が全面に出ることを嫌いますが、
私はある程度はあってもいいと思う派です。

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森本千絵さんにクリエイティブディレクターをお願いしました。森本さんっぽくないと
いう人もいましたが、いえいえ、まさに森本さんの世界観です。森本さんの弟子の高橋君も
激しく同意してくれました。アメリカ本国の厳しい規定ではNGのはずだった表現が、
実物を見てもらったら一発でOKが出ました。優れたクリエイティブが国境を越えた瞬間でした。
(大げさですね。)

NTTドコモ25周年記念 namie amuro×docomo CM

集団ダンスあり、CGあり、過去のコスチュームありと、盛りだくさんな内容です。
色々トラブルがあって大変でしたが、田中秀幸さん(Dir)の実力を発揮したCMだと思います。
(プロダクションはヘトヘトになっていました。)
実は、安室さんの後ろにいるダンサー達が、バーバリー姿になるということを、
ご本人が知らないということが、撮影の2日前に分かり、言うかどうか寝ないで迷ったのですが、
やぶへびになるのを恐れて言いませんでした。当日、ご本人はとても驚いていましたが、
笑って本番に臨んでくれました。去年渡った中で、最も危険な橋でした。

namie amuro ×docomo VRstage

世界初の8KのVRミュージックビデオですが、8Kという未知の領域でできるというスタッフと
できないというスタッフの間(はざま)で、鈴木利幸さん(Dir)と一緒に、時間をかけて、
一つずつ課題をクリアーにして完成した作品です。
困難を解決していくプロセスはいつでも同じです。最初の時点で「できる!」と思うことです。

安室奈美恵ツアーグッズ スペシャルムービー

ジャパネットの高田元社長に出演してもらおう、という無謀な企画ですが実現してしまいました。
グッズ会社の社長から、この後で数倍の費用をかけてグッズCMを放映したのですが、
コンバージョン率はこのPVの方が圧倒的に高かったという話を聞きました。

2012年 5大ドームツアーのメインビジュアル

レコード会社から、誰かカメラマンを紹介してほしいと言われ、すぐにためらわず、
宮本敬文さんを紹介しました。(安室さんには、経験豊かなカメラマンが何人かいることは
後で知りました。知らないことの強みです。)
宮本さんは安室さんとの仕事は一回きりでしたが、素晴らしい写真になりました。

最後に

安室さんの仕事を通して私が一番得たものは、作るだけではだめで、
自分もプロモーションに参加することです。
カラコンも、ケーキも、化粧品も、洋服も、予想を超えた売り上げを記録しました。
最初は驚くだけでしたが、だんだん予想できるようになりました。でも誰も聞いてくれません。
後から聞こえてくるのは、売り切れの悲鳴ばかりでした。
売り切れると、せっかく作ったCMのオンエアが打ち切りになります。
私にとって売り切れは、売れ残りよりも悲しいです。

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