ドラマ「CITY LIVES」メイキング

企画

フジテレビの旧知のプロデューサーから深夜枠のドラマの企画を依頼され
たので、2人（組）のクリエーターにお願いしました。2人（組）とも、長編、
短編等の実績がある人たちです。決まったのは、小林洋介、針谷大吾の企画です。
2人は、「viewers」というSF短編を作っていて、企画は、この作品の延長で
お願いしました。上がりがイメージしやすいし、本人たちの好きな世界なので
勝算があると思ったからです。異分野のクリエーターの場合、近い実績がない
人では、ギャンブルになると思っています。

脚本

2人とも長編は初めてです。しかし、映画についての造詣は深く、技術的
にも高度なものを持っているので、できると半分確信していました。最初に2人
から上がってきた脚本は、要素が多く、とても予定している２週間では撮影
できないと思い、街の交尾と若者たちの恋愛を中心にして、どんどん削って
いきました。また、全てのエピソードをモキュメンタリーにすると、最終話
で整合性が取れなくなるので、2人は自ら２話目途中からモキュメンタリーの
スタイルを変更することを決断しました。

キャスト

企画が決まった時点で、脚本作業と同時に、キャスティングを始めました。
プロットだけだと、なかなか内容を理解してもらえませんでした。
広田亮平さんは、実は優秀な子役時代があって、２回仕事をしています。
映画監督の内田けんじさんが、あるアイドルのM Vで、サブで出演していた広田君
の演技に夢中になったという話を急に思い出し、出てもらうことにしました。
一人での芝居が多いのですが、見事に演じ切ってくれました。広田君は成長して
いました。片山友希さんは、ドラマ「拾われた男」の短いシーンで気になった
女優です。久しぶりに面白い女優だと思いました。ナビゲーター役の高嶋さんを
含め、主演の2人に恵まれたと思っています。

スタッフィング

今回のスタッフで、長物（映画、ドラマ）をやったことがあるのは、ほぼ私
だけだったので、過去にやった低予算映画を参考にして、スケジューリングと
スタッフィングと予算表を作りました。企画決定から制作まで、時間がなかった
ので、ドラマや映画の制作スタッフが見つけることができませんでした。
最終的には、普段CMの制作をやっている人の中で、やりたいという人たちに
お願いしたのですが、ルールを守って、計画通りに進めてくれました。自分の
経験だと、CMスタッフは長いものをやると途中で破綻するケースが多く、
ある程度覚悟していたのですが、嬉しい誤算でした。

撮影

VFXに予算の大半を投入するためと、通常のドラマの体制だと、監督2人
はやりにくいと思い、自主制作映像のスタイルで撮影しました。
撮影部は2人です。照明部は基本的に室内とスタジオのシーンだけです。そして、
助監もなし。ロケは全て木更津で行いました。メインのロケ地は、ほぼ徒歩圏内
です。このスタイルのおかげで、日没の早い１１月の下旬に、予定通り毎日の
撮影量をこなすことができました。

仕上げ

VFX会社をどこにするかとても悩みました。大手の会社は、予算的に難しい
と判断され、ほとんどが断られました。中止を覚悟していた時、LILの木村さん
がCGディレクターを引き受けてくれてから、オムニバス、XORと、複数の会社
に分担することによって、動き始めました。みなさん、とても熱心で厳しいな
がらも楽しく仕事ができたと思っています。一部のVFXは、監督2人が自らが、
アフターエフェクトを使って作り出しています。音楽、SE、M Aのスタッフも
同様にのめり込んで、普通のドラマではあまりないような細かい音作りができて
います。

オンエア

深夜枠ですが、１話目はリアタイ検索でランキングの４位までいきました。
３週にわたってオンエアされましたが、賛否含めて、ほぼ予想した通りの評価を
得ることができました。Tverでは、通常よりも長く見ることができたので、
ギリギリまで、見た人たちがSNSを使って宣伝してくれました。今回SNSの力
というものを実感しました。自分の周りの人たちに見てもらうには、DMを２回
送って、やっと何人かがリアクションする程度です。ほとんどの人が見ません。
SNS上での賛成意見も反対意見も、精査してみれば、とても参考になります。
これは意外な発見でした。

今後

監督と私の主戦場であるCM業界ではあまり、話題になっていません。
ちょっと心配になりました。2000年代、C Mのスタッフが他のメディアで活躍
する時期がありました。実は、今でも若くて優秀なスタッフは沢山いると実感
しています。そして、彼らを活用するには戦略が必要だと思っています。