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CM制作の楽しさについて

CM制作を楽しいと思っていない若い人が増えているようなので、CM制作の楽しさに
ついて書きました。

1.いろいろ体験できる。

CMは、スポンサー、商品、クリエーター(企画)、スタッフ、出演者が変わると、内容
がガラリと変わります。オーダーメイドのようなもので、そのたびごとに、いろいろ調べ
たり、やり方を考える必要があります。しかし、こんなに未知の領域を次々と体験できる
職業もそう多くはないと思います。最近、そういった作業をプロに任せる人が増えている
のが気になります。もったいないと思います。

2.目標を設定する。

言われてやるだけではなく、自分で目標を作ると楽しくなります。例えば、今回はこの有
名監督の創作の秘密を知る。このカメラマンがなぜ美しい映像を撮れるのか見極めたい。ア
ニメ・CG なら、作り方、スタッフ、業界を勉強する。商品が食品なら、シズルシーンを徹底
的に勉強して、他のCMに負けないシズルカットを撮影する、などなど。好奇心をもって、積
極的にやれば、どんどん自分の知識を増やすことができます。そうすると、知識と知識が相乗
効果を上げるようになります。そうやって得た知識をどう生かすか?→6

3. 最新技術にチャレンジできる。

CM制作において、映像の最先端の技術にチャレンジすることができます。
他の映像業界に比べて、予算があります。有効に使うべきです。
私は、自分のCMの最新技術への取り組みは、映画、ドラマ、コンサート等の大型映像、3D、
AR、VR、8Kに応用することができました。CMだけでは飽きます。飽きられます。CMを出発
点として、いろいろな映像分野に挑戦するべきです。

4. 長く続けていると、興味の対象がどんどん変わっていきます。

私が業界に入って何年かは、有名クリエイター・スタッフが参加するCM、中島信也のCM、
賞が取れるCMを制作するのに夢中でしたが、その後、いろいろな映像の仕事を一通りやった
今では、CMで、商品について効果的にメッセージを伝えることに興味があります。また、商
品とアーティストの相乗効果も重要視しています。単なるブームに乗っているだけで、効果を
上げていないCMが多いと思っています。これは、CM以外の映像を体験することによって、
マーケティングに対して興味を持つようになったからです。自分にとっては大きな変化です。
また、この年になって現場をやっていると、スポンサーの社長さん、宣伝部長さんと年齢が近
いので、彼らのやりたいことが以前よりも分かるようになります。偉くなって、部下にガンガン
文句を言うのではなく、自分の考えをクライアントが聞いてくれる醍醐味を味わうことができま
す。(全部ではありませんが。)

5. CM制作者はとても忙しいです。

「若い頃の苦労は買ってでもせよ。」ということわざもありますが、明らかに、無駄な作業が
多いです。労働時間を短くするには、いくらでも方法があります。特に社内外の発注する立場の
人が、仕事の内容をきちんと理解していない場合が多いからだと思います。例えば、頻繁なリス
ケは、宅配便における再配達のようなインパクトがあると思っています。
(宅配業界は徐々に解決しています。)
私は、自分で会社を作ってから、自分で管理できる部分が増えたため、とても時間が自由になり
ました。疲れたら休んで充電するべきです。睡眠負債という言葉を最近知りました。猛烈に忙し
い時期があって、急に仕事がなくなり、早死にする人が多い業界です。自分と同年代の人が早く
亡くなっていくのに、愕然としています。(他人事ではありません。)
日本人は、島国のせいか、すぐに過剰になりがちな民族です。しかし、過剰になると、飽きられ
るのも早く、価格が下落します。多少休んだからといって、人手不足なので仕事はなくなったり
しません。長く続けることが重要です。映像制作の仕事は、根本的には、ロボットやAIでは代用
できない仕事だと確信しています。個人的には、CM業界は、利益確保のために、必要性の問われ
るような技術開発に熱心のような気がしています。
(わざと難しくして、参入障壁を高くしている?)
もっと、安価で楽ができるように技術を積極的に開発するべきだと思います。

6. よく考えると、穴だらけの業界です。

やり方次第で、まだまだチャンスがあると思います。重要なのは、長い時間をかけて、いろいろ
な分野をやり続けること。物事にはサイクルがあります。いくつかのサイクルを経験すると、どん
な人でも自分のやりたいことと、世の中が噛み合うタイミングが必ず来ると思っています。そのタ
イミングが来れば、今まで培って得た知識・技術を全力投入すれば、きっと成功の果実をつかむこ
とができると思います。
NHKが最初の大河ドラマを作ろうとした時に、当時テレビよりはるかに力のあった映画会社の俳優
たちの多くが断る中、進んで協力したのは、歌舞伎の人たちという話を知りました。今でも伝統芸
能である歌舞伎の人たちはあらゆる分野で大活躍です。大いに見習いたいです。

少し寄り道…

動画ブームです。しかし、広告となると、短い時間の中で必要な要素を効果的に詰め込む(!)
技術は、 CMが優れていると思います。15秒は短すぎるという人がいますが、15秒で、きちん
とスポンサーのメッセージを伝えていないCMが多いと思います。そして、長い広告動画は、映画
やドラマに比べると、飽きられます。
最近強く思うのは、動画を作りたいという人(スポンサー)は沢山いるのですが、動画にどれくら
いお金がかかるのか全くわかっていない人が多いことです。「谷口さん、「カメラを止めるな!」
は全然お金がかかっていないのにヒットしたじゃないですか!」とあるスポンサーに言われました
がある程度お金をかけた映画の方がヒットする確率が全然高いです。CMも然りです。

最後に、

なるべく自分よりも優秀な人と仕事をすることです。そのチャンスがとても多い業界です。
たくさんの最高の先生がいます。優秀な人には優秀な人が集まります。類は友を呼ぶという
ことわざがあります。自分が優秀になったと思ったら、驕らず、今度は、どんどん若い人を
ひっぱりあげましょう。※永遠に最高の先生はいません。

楽しい部分の裏には、必ず楽しくない部分があります。
(楽しい部分)-(楽しくない部分)=プラスを、少しづつ時間をかけて積み上げれば、
自分の財産にしていくことができます。

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