サイレントフィルム taniguchip

■コンサート用映像のプロデュース

2000年のSMAPのコンサートから今年の木村さんのソロライブまで、ライブ映像
(ライブステージにあるLEDに流す映像)をプロデュースしてきました。
一番最初はSMAP(00年 S mapツアー)。 映像中心だと言われたので、どこに何を映
せばいいのか理解せずに、とにかく全編を映像で埋め尽くそうとしました。今思えば
かなりの無茶振りでした。初期の頃はメンバーの言うことを断片的に聞いて作って
いたので、前半と後半のコンセプトが違っていたりして、それでもお客さんは満足し
ていたので複雑な心境でした。SMAPのライブは3時間半以上あって、長時間お客さ
んを楽しませるためには何でもありという感じでした。ジャンクション用映像も実写
で凝ったものを作りました。最近の韓国のアイドルのライブは、明かに影響を受けて
いると思いました。今の日本の方が大人しいと思いました。

3Dライブ(06年 Pop Up! ツアー)

3Dブームの前です。(おそらく)日本で最初に3Dでハイスピード撮影を行いました
当時の技術でハイスピードのビデオカメラを2台近い距離に設置するのが難しく、小
さな16mmのハイスピードカメラを2台並べて特殊なカメラ台を作って撮影しました
コンサートで映像の実験ができると思った最初の仕事です。

黒田秀樹さん

(super.modern.artistic.performance ツアー(08)とWe are SMAP!ツアー(10))
は、メンバーの話を聞きながら、CMディレクターの黒田秀樹さんとまとめていきま
した。ここにきて、やっとコンセプトがある映像を作ることができるようになりま
した。オリジナルのコンセプトがないと、場当たり的な映像になってしまい、結果
的にどこかで見たような映像になりがちです。

安室奈美恵さん(12年5大ドームツアー)

SMAPのコンサートを制作しているオンザラインさんから安室さんが15年ぶりにド
ームツアーをやるというので話がありました。SMAPの仕事ぶりを見ての発注でし
たが、安室さんは業界で一番キツイと言われていたので、当初お断りしました。
でも説得されてしまいました。この時、初めて自分はライブ映像慣れしている!と
思いました。

喜田夏記さん(14年 LIVE STYLEと15〜16年LIVEGENIC)

須藤カンジさん(15〜16年LIVEGENIC)

安室さんの最初の2年は、まだ不完全燃焼な部分があったのですが、14年に安室
さんから女性クリエーターでやりたいという話があったので、調べて、喜田さんに
白羽の矢を立てました。翌年は、新たな刺客?須藤カンジさんと喜田さんの2クリ
エーター体制でお願いしました。クリエーターの条件はアートディレクションと映
像演出の両方ができる人です。SMAPの時の黒田秀樹さん、木村さんのライブの鈴
木利幸さん(ユナイテッドラウンジ)もこの条件に当てはまります。また、ライブ
は生き物で、公演が始まってからも、お客さんの反応で、どんどん映像等が変化す
る場合があります。判断(切り替え)が早くて、仕事が早いことも条件です。

CG会社

沢山のCG会社に映像をお願いしました。力のある、コンサート映像を作る会社が
条件ですが、最初にクリエーターの映像のコンセプトがあるとないとでは、上がり
が大きく違ってきます。CG会社は何でもできるわけではないので、企画からお願い
するには限界があります。私はクリエーターとCG会社が凄い相乗効果を上げるのを
何度も目撃しています。スタッフィングをするプロデューサーの役割も大きいです。

MOMENT FACTORY(18年 Finally)

安室さん最後のドームツアー。カナダから、マドンナなどをやっているMOMENT
FACTORYが参加しました。手法はとてもオーソドックスですが映像の密度は半端
なくて、日本と世界の差を痛感しました。制作費も全然違います。日本のやり方が
逆張りなら、MFは順張りです。自分たちの強みに時間をかけて集中していました。
ハリウッド映画と日本映画の違いの縮図を見るようでした。

木村拓哉ソロライブツアー(20年 GO with the Flowツアー)

SMAPと安室さんで蓄積したものを全投入しようとしたら、各方面から反動があり
ました。ライブの難しいところです。

私は(今も)CMのプロデューサーでしたが、元々映画を作りたかったので
映画やドラマは率先してプロデュースをしていました。しかし、コンサートは全く
初心者からのスタートです。最初の何年かは本当に辛かったです。出費も物凄か
ったです。しかし何年も続けていくうちに、自分の中でやりたいことが生まれて
きました。映像はやり続けていると、本当はこれがやりたかった!と実感する瞬間
が来るのですが、私にとってコンサートは、それが後からやってきた珍しいパター
ンです。お金をコントロールできるきっかけは、10年のSMAPライブ。この年は余裕
がなく、自分1人でプロデュースすることにしました。不退転の決意で、全てのスタ
ッフに直接交渉して、半分のギャラ、規模も半分でやってみたらできたのです。
あれーっと思いました。ちなみに予算は今の方が厳しくなっています。
数多くの部下、クリエーターが、矢折れ、力つき退場してきましたが、自分は何人
かのスタッフと現場に立ち続けています。長く続けることが重要です。

コンサート制作自体、大がかりで長期の共同作業なのですが、映像はなかなか
外部の血が入りにくい状況であることはあまり変わっていません。理由はいくつか
あって、1つ目は、クリエーターでライブを専門でやっている人はほとんどいなく
専属でやっている現場のコンサートスタッフとのコミュニケーションが緊密でない
こと。2つ目は映像の決定権者が、各プロジェクトによって変わること。例えばア
ーティストのメンバーの中に映像担当がいたり、振付・演出の人で特にこだわる人
がいたり、とバラバラです。またこだわりかたのレベルも様々で、コミュニケーシ
ョンに時間がかかります。また、今までのやり方を変えようとした場合、さらなる
エネルギーが必要です。続けてやる人(特にプロデューサー)が少ないので問題が
明確化されていません。

映像自体は、コスト、時間の関係で、どんどんCGばかりになり似たようなも
のばかりになっています。しかし、海外の一部のライブでは、例えば、U2は実写を
多用し、かっこいい大人なダイナミックな世界を作っています。また、ガガやケイ
ティ・ペリーは独特なユーモアがあります。これ位でいいだろうと思わずに、まだ
まだ勉強し、できる(やりたい)ことはあるのではないかと思っています。
コンサートには最新の映像技術が詰まっているので、他の映像分野でも大いに活用
できます。逆もあります。

コロナ後のコンサート業界は、いかに続けていくか?すでに、リモートのライブ
が始まっています。新しいテクノロジーへのチャレンジがはじまっています。

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