サイレントフィルム taniguchip

■若きクリエーターが作る木村拓哉さんのMVをプロデュース

11月中旬の深夜に、木村さんのマネージャーさんから、動画配信のGYAO!
の番組で若いクリエーターを公募して木村さんのMVを2本(曲)作ってもらお
う、という企画が決定したので、どのように進行したらいいのか相談がありま
した。

今までサイレントフィルムで、女性カメラマンに動画コンテンツを作るセ
ミナーを開催したり、前の会社の時に何人かの新人ディレクターのCMやPVを
プロデュースした経験から、採用から完成までのロードマップを考えて、番組
スタッフに提案しました。多少意見が出るのかと思っていたのですが、全て任
せます!と言われてスタートしました。

お正月をはさんで2ヶ月後に番組でMVを紹介するという時間のないスケ
ジュールだったので、確度を高めるために応募の段階で、企画と自分の作品
集を提出してもらいました。具体的な制作費(30万)の提示は反対意見も
ありましたが、後々のことを考えて、告知してもらうことにしました。当初
500人位応募があるのでは?と言われたのですが、告知から締め切りまで
一週間位と短かったのと、先述の条件を厳しくしたので、そんなに来ないと
思っていました。最低優秀な人が2名いれば、なんとかなると自分に言い聞
かせていました。それでも思った以上に応募がありました。それを番組の若
いスタッフと2人で選考し5人に絞り込み、木村さんにプレゼンしました。
番組では木村さんは、私(谷口)が選んだと言っていましたが、最終的に選
んだのは木村さんです。余談ですが、この時木村さんは真面目な人が好きな
んだな、と思いました。最終面接前に2人(組)に絞り込まれてしまったの
で、面接が少し心配でしたが面接してみると、できそうな若者たちだった
ので少し安心しました。

その後、撮影まで約2週間かけて準備をしました。ポイントはスタッフ
ィングと撮影場所と予算管理です。NEWSTARTチームは、アニメを専攻し
ている学生なので、実写経験がなく心配でしたが、編集もできる優秀な若
いカメラマンを探してきました。ロケ場所は、普通のスタジオだと予算の
大半を使ってしまうので、雑居ビルにあるスタジオや、クリエーターの母
校である大学の美術館と、安く使える場所を見つけてきました。木村さん
は、撮影のために、わざわざ武蔵野美術大学まで来てくれました。とても
いいロケーション撮影ができました。両チームとも、企画の段階で予算の
ことは意識してくれていたので、最終的には予算の範囲内でできています。

私が口出しをしたのは、忙しい木村さんを時間通りに撮影するための
段取り位で内容に関しては1つか2つ位です。これは、いつもプロの人と
やる場合よりも少ないのではないかと思いました。最初の前提づくりが大
事で、ここに漏れがあると制作に大きな影響があります。若いクリエータ
ーたちは、それを忠実に守り、スケジュール通りに、予算通りに、クオリ
ティの高いミュージックビデオを作ってくれました。さらに、今回のそれ
ぞれのMVのカメラマンは、監督たちにとって初めての人たちだったのです
がお互いを尊重し合って、良いコミュニケーションをとっていました。こ
れは驚くべきことです。選ばれた人たちがたまたま優秀だったのか、今時
の若い人たちの傾向なのか、結論を急ぐことはできませんが、同じ条件で
プロのスタッフがやると、自己主張が大きく、ハナから前提を守らなかっ
たりと、もっと混乱したのではないかと思い少し複雑な気分です。

今回の若いクリエーターたちが意外だったのは、奇をてらわずに、き
んとした考えをもって自分たちのもっている力を最大限に使い切ったこと
です。ですので手法はむしろクラシックです。

何度も言いますが、きちんとしたロードマップを作り、お互いを信頼
することが重要だと思いました。自分の周りでは驚くほどそれがなされて
いません。自分としても多くのことを学べる現場でした。これからも若い
クリエーターの成長のお手伝いができればと思いました。

目の前のビジネスよりも、1人の天才よりも、よいコミュニケーション
の積み重ねが映像の未来を明るくしていくものだと確信しています。

番組とMVをご覧になりたい方はこちらをご覧ください。
  https://gyao.yahoo.co.jp/player/09247/v00023/v0000000000000001125/
URLは、#2ですが、#3〜4まであります。(3月末まで公開。)

最後に、学生や卒業生の話を聞いて、映像を教える学校が企画から
公開※まで、実践で教える必要性を痛感しました。日本の映像業界は多種
多様で、いろんなやり方が乱立しています。しかし、基本は同じなので、
社会に出る前に学んだ方が効果的だと思いました。
※欲を言えば、プロモーションと販売(収益化)も。

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