サイレントフィルム taniguchip

メイキング オブ 「SURVIVE STYLE5+」

2004年に初めてプロデュースした映画が、新文芸坐(池袋)で、
9月7日19時25分、9月7日17時10分、9月9日16時55分の3回上映します
海外でも4Kレストアが販売され、イギリスでも上映されます。数え切れ
ないほどのエピソードがありますがいくつかご紹介します。今だから話せ
ること。ちょっと辛口。

脚本

5組(複数)の人間が登場するという設定は「マグノリア」、「スナッ
ッチ」と同じ構造。脚本を書いた多田さんはこの2本にぞっこんでした。

スタッフィング

メインスタッフは、監督の関口さんがCMでやっているスタッフを起用。但
し美術の山口さんや小道具は映画の人。助監督、制作、車両も映画のスタ
ッフにお願いしました。でもCMと映画のスタッフは合いませんでしたね。
撮影がどんどん延期になると映画のスタッフは契約が切れ、最後のビルか
ら浅野さんが飛び降りるシーン(実写)はCMスタッフだけで撮影したのを
覚えています。

キャスティング

なかなか決まらなかったのは浅野さんの奥さん役(橋本麗香)と阿部寛の役
ヴィニー・ジョーンズはロンドンまで行って交渉しました。みんな驚いて
いましたが、ロンドンでは数年間日本のメーカーの海外向けのCMを作って
いたので私にとって馴染みの街でした。ただ、ギャラの税金に関して、ロ
ンドンのコーディネーターと揉めました。ヴィニーがそれを気にしていた
のを覚えています。What’s your function? (彼の台詞)ではなく、
What’s your trouble?

撮影

カメラのシグマさんはCMの人なので前日カメリハ、ライティングチェック
をやることを主張して、映画スタッフから不興を買っていました。撮影助
手の睡眠時間がとても気になりました。撮影日数はどんどん延びました。
どこまで伸びるのか心配していたのですが、1日に撮影したフィルムの尺
数で大体予想することができるようになりました。

仕上げ

CGに関しては元々あまりCGを信頼していない関口さんのOKがなかな
か出ませんでした。CMの監督は一つ一つのシーンを大事にする傾向にあ
るので、どうしても間延びする傾向にあります。

音楽

このサントラはジェイムス下地の傑作です。しかし、その評価は常に
外からでした。ミキサーのミックスが日本映画風で古典的だったので音楽
が存分に生かされていないのが残念でした。エンディングの曲も、交渉が
うまくいかずサントラに入れることが出来ませんでした。

予算

あらゆる手を使いました。しかし、それは再現不可能なやり方です。
自分が作った映画の後半の何本かは赤字を克服できましたが、そうやって
残ったわずかなお金では、生きていくことが困難だと思いました。

感想

11年前にユーロスペースで再上映した時に、浅野さんのキャラクター
造形が弱いと思いました。なので感情移入がしづらい。浅野さんに頼り過
ぎていたということです。制作当初、この映画の持つ愛すべき多様性のよ
うなものは、作るのが精一杯で当時あまり理解していませんでした。

評価

それでも、この映画のユニークさは唯一無二だと思います。今では作
れない映画だと思いました。私はこの時の経験を反面教師として、その後
6本の映画をプロデュースしました。辛い経験をすると次は絶対そうなら
ないようにするのが進化の鉄則です。でもそんな人はなかなかいなくて
同じことを繰り返すか、トラウマになってやらなくなる人の方が多いで
すね。最近、知り合いのCMディレクターが映画を撮るというので話を聞
いたら、この時と全く変わっていない状況に慄然としました。

SURVIVE STYLE5+(2004)

脚本:多田琢、監督:関口現 プロデューサー:谷口宏幸、福山亮一
出演:浅野忠信、小泉今日子、阿部寛、ヴィニージョーンズ、千葉真一他

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